研究課題/領域番号 |
08672087
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
羽毛田 慈之 明海大学, 歯学部, 助教授 (90164772)
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研究分担者 |
真野 博 明海大学, 歯学部, 助手 (20265359)
久米川 正好 明海大学, 歯学部, 教授 (40049367)
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キーワード | osteoclast / bone resorption / apoptosis / estrogen |
研究概要 |
我々は本研究を通して、我々が独自に開発した2つの純粋な成熟破骨細胞の分離法を用いて、エストロジェン(E2)の成熟破骨細胞への直接作用を解明することに成功した。このことによって、E2欠乏によってもたらされる骨粗鬆症などの骨量減少の機構の一端が明らかにされた。研究実績に関して以下に示す。 第1に、成熟した破骨細胞を細胞懸濁の状態で単離し、象牙片上に播種することによって破骨細胞のみによる骨吸収活性を評価することが可能になったことが大きい。このことによって、破骨細胞の骨吸収活性の調節機構を分子レベルで解析することができる。最初に我々はE2が10^<-11>Mという生理的濃度で有意に破骨細胞の骨吸収活性を抑制することを見いだした。この骨吸収活性抑制と関連して、E2は破骨細胞に特異的に発現し、骨吸収過程の有機基質分解に大きな役割を持つカテプシンK(Cat-K)およびH^+産生の律速酵素であるcarbonic anhydrase llのmRNAレベルを大きく減少した。次に、破骨細胞のE2受容体の検出を試み、ER aがabundantに発現していることを見いだした。しかし、ERβに関しては検出することができなかった。これらのことから、E2は破骨細胞に直接作用して、骨吸収活性関連酵素群の発現を減少させ、それらの結果から骨吸収活性を抑制することが示唆された。さらに我々は、もう1つのE2の骨吸収活性抑制作用の機構として、破骨細胞のapoptosisに注目した。その結果、E2は骨吸収抑制を示す同じ濃度域で破骨細胞のapoptosisを大きく誘導することを発見した。このE2のapoptosis誘導はpure ERのアンタゴニストであるICIによって完全に、また、partialなERのアンタゴニストであるtamoxifenによって部分的に打ち消された。 以上の結果から、E2の直接的な成熟破骨細胞の骨吸収活性抑制作用は、少なくとも、骨吸収活性関連酵素群の発現減少もしくはapoptosis誘導といった2つの別な機構からもたらされることが明らかとなった。
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