研究概要 |
本研究では、ヒト乳歯歯冠象牙質の切端直下に出現する象牙細管に類似の太い管状構造物(large tubules)の本体ならびに出現経緯を明らかにするため、内部を占めるコラーゲン線維の微細構造を詳細に観察すると共に、コラーゲン線維の性状(タイプ)を特定物質の三次元的局在を知る上で有用なコロイド金標識の免疫走査電顕法を用いて検索した。 【方法】交換期にあるヒト乳歯を抜去後、直ちに4%パラフォルムアルデヒド溶液で4℃、24時間浸漬固定したものを研究材料とした。歯牙は歯髄腔側から切縁に向かって近遠心的に凍結割断を行った。一部の試料は、通法に従い走査型電顕観察用試料とした。免疫電顕用試料として、唇側の象牙質片はタイプIコラーゲン抗体(rabbit anti-bovine type I collagen,1:200)、舌側の象牙質片はタイプIIIコラーゲン抗体(rabbit anti-bovine type III collagen,1:80)で4℃、12時間反応させた。その後、20nmのコロイド金と結合した二次抗体(goat anti-rabbit IgG,1:50)と4℃、12時間反応させ、通法に従いSEM観察用試料とした。観察に際しては、同部位の二次電子像と反射電子像を撮影した。 【結果】小管構造物内部に出現したコラーゲン線維は、太さ50〜150nmで、60〜70nm間隔の周期構造を有し、小管長軸に平行するものであった。コラーゲン線維の太さにかかわらず、コラーゲン線維上にタイプIコラーゲン標識金粒子およびタイプIIIコラーゲン標識金粒子が特異的に観察された。これらの金粒子は反射電子像によってさらに明瞭に認めることができた。
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