研究概要 |
歯根膜は様々な環境の変化に対して常に一定の幅を保つことが知られている。本研究では、歯根膜の幅を規定し歯牙のアンキローシスを防ぐ因子とマラッセの上皮遺残との関連、マラッセ上皮遺残の細胞生物学的特徴や細胞増殖能の検討と共に、これらの制御因子の解明を目的としている。生後1〜12週のSD系ラット、ブタの培養マラッセ上皮細胞および実験的に歯周炎を惹起させたラットを用いて、CK-8,CK-13,CK-19,CK-20,KL-1等のCytokeratin抗体、IV型Collagen、Laminin、Laminin-5、Integrin群、Cadherin群等の基底膜構成蛋白および接着蛋白に対する抗体、Connexin43、32、26等のGap結合構成蛋白に対する抗体を用いて、免疫組織化学染色および免疫蛍光染色を行った。併せて、細胞骨格構成蛋白のActinをPhalloidinやPhallacidinにより標識するとともに、細胞核をTO-PRO-3等の蛍光色素により染色して多重染色を行ない、共焦点レーザー生物顕微鏡により三次元的に観察した。歯牙形成過程のエナメル上皮やヘルトヴィッヒの上皮鞘、マラッセの上皮残遺には、CK19が強く発現すること、Lamininはへルトヴィッヒの上皮鞘の歯髄側では象牙芽細胞が象牙質を形成し始める時期に消失すること、歯根膜では外骨膜から歯頚部を結ぶ線維芽細胞内にアクチン繊維が豊富に見られること、マラッセの上皮細胞間には細胞の集簇に伴ってConnexin43で構成されたGap結合が多数現れること、歯周炎の治癒過程では、長い付着上皮先端部にLamininが網状に存在すること、PCNAやAgNORs染色によって検討した歯根膜細胞の細胞増殖能は、創傷治癒初期には高いが比較的早期に一定となることなどが明らかとなった。
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