歯根膜は常に一定の幅を保つことが知られている。本研究では、歯根膜の幅を規定し歯牙のアンキローシスを防ぐ因子とマラッセの上皮遺残との関連の解明を目的とした。生後1〜12週のSD系ラット、培養マラッセ上皮細胞、実験的歯周炎を惹起させたラットを用いて、Cytokeratin、IV型Collagen、Laminin等の基底膜構成蛋白や接着蛋白、Connexin 43、32等のGap結合構成蛋白に対する抗体を用いて、免疫組織化学染色および免疫蛍光染色を行い、多重染色により共焦点レーザー生物顕微鏡により三次元的に観察した。 これらの実験結果から、1)歯牙形成過程におけるエナメル器の上皮、ヘルトヴィッヒの上皮鞘、マラッセの上皮残遺には、CK19が強く発現する、2)へルトヴィッヒの上皮鞘およびマラッセの上皮残遺の周囲には、ラミニンが局在する、3)へルトヴィッヒの上皮鞘におけるラミニンは、象牙芽細胞が象牙質を形成し始める時期に消失していく、4)マラッセの上皮細胞間にはConnexin 43で構成されたGap結合が多数出現する、5)歯根膜では外骨膜から歯頚部を結ぶ線維芽細胞内にアクチン繊維が豊富に見られること。また、実験的歯周疾患罹患後の治癒過程において、細胞増殖関連抗原であるPCNA抗体(Proliferatinng Cell Nuclear Antigen)および、細胞増殖に関連したAgNORs(核小体形成体)を検討した結果からは、6)歯根膜細胞と共に付着上皮基底側および先端部での細胞増殖能が高いこと、7)歯根膜細胞の細胞増殖能は、創傷治癒初期には高いが再生したポケット上皮や長い付着上皮と比べて、比較的早期に一定となること、8)治癒過程に形成される長い付着上皮では、上皮の先端部のLamininが網状となって存在すること、などが示された。
|