研究概要 |
成人性歯周炎の主要原因菌として重視されているPorphyromonas gingivalisの黒色色素産生性について分子生物学的にその機構の解明を試みた。P.gingivalis381株と33277株の染色体DNAは制限酵素PstIおよびHindIIIでよく消化され、その電気泳動パターンは両菌株で異なっていた。PstIとHindIIIそれぞれの消化断片の遺伝子ライブラリーから大腸菌に形質転換し血液平板培地上にて、黒色色素産生クローンのスクリーニングを試みたが、得ることができなかった。次に標準株の染色体DNAヘトランスポゾン(Tn)を挿入させ、黒色色素産生欠損株のスクリーニングを試みた。Tn挿入プラズミドとしてpR751^*Ω4,pVOH1およびpVal1を用いたところ381株に対する挿入効率はそれぞれ1.7x10^<-9>,9.9x10^<-11>,5.3x10^<-11>,33277株に対するそれは、それぞれ7.5x10^<-9>,3.1x10^<-9>,6.2x10^<-10>であった。しかしその中で黒色色素産生欠損株はpR751^*Ω4でのみ得ることができた。黒色を呈さないコロニーは33277株で18株、381株では2株分離することができた。その中で蛋白分解活性を有するものは33277株では5株、381株では2株ともであり、黒色コロニーを呈さず蛋白分解活性のない株は33277株からの13株であった。次にベクターあるいはTnの挿入数、位置について検討を行った結果、33277株の2株を除いてすべてプラズミドベクター本体が染色体DNA中に挿入されていることが確認された。Tnのみ挿入の株は蛋白分解活性を有するT41株と有さないT3株でありTn挿入は1カ所であった。制限酵素Pst1消化によるTn含有断片はT41株では8kbp、T3株では20kbpであった。今後、このトランスポゾン挿入部位前後の塩基配列および親株と、所有している黒色色素産生欠損臨床分離株とで比較検討する予定である。
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