研究概要 |
トランスゴルジ網様体(TGN)は,ゴルジ装置の最もトランス側に位置するコンパートメントであり分泌の中枢であると考えられている.つまり,TGNで分泌蛋白のソーティング(選別)が行われ分泌顆粒が形成される.近年,それらソーティングの過程にG蛋白質,すなわち,rab3,rab6,β cop,γ adaptin等の関与が明らかとなった.本研究課題は,TGNのソーティング機構に関与する分子のトランスロケーションを電子顕微鏡で捉えることに主眼をおくものである.平成8年度は,G蛋白分子,rab3,rab6,β cop,γ adaptinに対するポリクローナル抗体およびTGNのマーカー蛋白質であるTGN38に対するポリクローナル抗体を作製した.本年度は,マウス唾液腺を材料とし,これらの抗体が分泌顆粒におけるゴルジ野のどの部域を認識するのかを免疫電顕で調べるために,材料の固定条件や包埋樹脂の種類などを検討し,次の結果を得た. 1.光顕レベルでは,様々の固定,包埋条件を検討した結果,冷4%パラホルムアルデヒド固定,クリオスタット凍結切片を常法のごとく,PAP法で染色を施した場合が最も強い反応が得られた. 2.三大唾液腺のうち耳下腺腺房細胞がこの方法で最も強い免疫反応を呈し,本研究の目的であるG蛋白質の検出に最も有効な材料であることがわかった. 3.耳下腺腺房細胞では,これらG蛋白質およびTGN38は,核周部の顆粒状反応物として認められ,G蛋白質はトランスゴルジ部域に局在していることが推測された. 4.現在,耳下腺を材料として免疫電顕法でG蛋白質およびTGN38の局在を調べるための,固定条件および包埋樹脂等を検討している.
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