本研究はラット顎下腺を用い、外分泌細胞の分化発達過程における内分泌学的変化について検索することを目的としており、本年度は以下のような結果を得た。 1.生後発達に伴うestrogen receptor(ER)の動態 (1)in situ hybridizationによる検索 ER cDNAを用いたin situ hybridization(ISH)の結果、幼若期ではterminal tubule cell(TT-cell)に陽性所見が認められた。このTT-cellは離乳期以降急速に消失するが、細胞の消失に伴い顎下腺におけるISHは陰性であったが、雌の介在部の一部に陽性所見を認めた。すなわち幼若期においては顎下腺におけるエストロゲンの標的部位はTT-cellであることが示された。さらに雌の顎下腺ではTT-cellが一部残存し、介在部を構成することが示唆された。 (2)RT-PCR法によるestrogen receptorの検索 ラット顎下腺より全RNAを抽出し、RT-PCR法によりERを定量的に検索した。その結果、幼若期におけるERは成体のものに比べ著しく多量に認められた。さらに幼若顎下腺でその含有量に性差が認められ、雌の方が雄に比べてその含有量は優位に多かった。 2.estrogen阻害剤の影響 estrogenの作用を検索するため、その阻害剤であるtamoxyfenを幼若ラットに投与し、顎下腺の形態学的変化を検索した。その結果、腺房部には変化は認められなかったが、TT-cellの顆粒に著しい減少を認めた。これはtamoxyfenにより顆粒合成が阻害されたことを示すものであり、estrogenは幼若顎下腺TT-cellの顆粒合成に関与していることが推察された。
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