本研究は外分泌腺、特にラット顎下腺を用いそのホルモン支配を生後発生的に検索したものである。 ラット顎下線は哺乳期と離乳期以降ではその構成細胞が異なっている。哺乳期にはterrminaltubule cellが多数認められるが、離乳を境にこの細胞は消失し、代わりに顆粒管が形成され、成熟顎下腺へと分化する。 生後発達に伴うアンドロゲンレセプターとエストロゲンレセプターの局在を免疫組織化学、並びにin situ hybridization法により検索した結果、哺乳期にはエストロゲンレセプターがterminaltubule cellに認められ、アンドロゲンレセプターは検出できなかった。離乳期以降terminal tubulecellの消失に伴いエストロゲンレセプターは検出されなくなり、代わりに顆粒管の部位にアンドロゲンレセプターが検出された。また、エストロゲンの阻害剤であるtamoxifenを投与したところterminal tubule cellの顆粒の合成阻害を認めた。 以上の結果より、哺乳期顎下腺はエストロゲンの支配を受けており、エストロゲンはterminaltubule cellの顆粒合成に関与していることが推察された。離乳期以降はterminal tubule cellの消失に伴い、顆粒管の形成がはじまり、この部位はアンドロゲンに強く影響を受けている。哺乳時と離乳期以降の顎下腺ではホルモン支配が異なることが本実験により認められ、これは顎下腺の構成細胞の違いによって生じる現象であることが示唆された。
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