本研究の目的は、ラット切歯エナメル芽細胞のアポトーシスにおいて、その結果として生ずるアポトーシス小体の処理過程を知ることである。アポトーシスが実際移行期エナメル芽細胞で生じていることは、transferase-mediated dUTP-biotin nick end labeling(TUNEL)法によって確認された。本研究によって得られた結果からは、エナメル芽細胞、乳頭層細胞およびマクロファージがアポトーシス小体の貪食細胞であることが示唆される。さらに、アポトーシス小体を貪食しているマクロファージは同時に、OX6抗体によってその形質膜が強く標識された。このことは、このマクロファージが同時に主要組織適合性抗原クラスII(MHC class II)を発現していることを示している。MHC class IIは抗原提示分子として知られていることから、アポトーシスの過程で生じた自己抗原が提示され、さらに一連の免疫応答の生じている可能性が示唆された。これらの結果のついては既に、原著論文および短い総説として発表された。本研究の第二の目的は、アポトーシスにおいて核のクロマチンDNAを含む核質のrearrangementを調べることにある。予備的な結果としてDNAはもちろんRNAおよびRNA結合タンパク質のrelocationを示唆するデータを得ている。今後はさらに、この問題について蛍光抗体法、およびpre-embedding法あるいはpost-embedding法を駆使した免疫電子顕微鏡法を用いて、アポトーシスの解明に努力してゆく予定である。
|