研究概要 |
ヒトの顎骨では歯胚の発育異常によって、種々の歯原性病変が発生するが、それらの発生機序についてはまだよく分からないことが多い。本研究では、加熱食品中に存在している発癌物質ヘテロサイクリックアミンのTrp-P-2(3-amino-1-methyl-5H-pyrido[4,3-b]indole)および細胞成長因子のTGF-α(transforming growth factor)が、培養歯胚の発育過程におよぼす影響を組織学的ならびにBrdU法によって検索した。実験にはddyマウスの歯胚を用いた。胎生17日目のマウス胎仔より下顎第1臼歯歯胚を摘出し、下記のような7群に分けて培養を行った。第1群では、歯胚をBGjb培地で6日間培養した。第2群では、歯胚をBGjb培地で2日間、その後、BGjb+TGF-α(100ng/ml)培地で4日間培養した。第3群では、歯胚をBGjb培地で2日間、その後、BGjb+TGF-α(200ng/ml)培地で4日間培養した。第4群では、歯胚をBGjb+Trp-P-2(1μg/ml)培地で2日間、その後、BGjb+TGF-α(100ng/ml)培地で4日間培養した。第5群では、歯胚をBGjb+Trp-P-2(1μg/ml)培地で2日間、その後、BGjb+TGF-α(200ng/ml)培地で4日間培養した。第6群と第7群では、歯胚をそれぞれBGjb+TGF-α(100ng/ml)とBGjb+TGF-α(200ng/ml)培地で6日間培養した。上記のすべての群の歯胚を培養後、組織学的に検索した。また、第1群、第6群、第7群の歯胚ではBrdU法による検索も行った。本実験の結果から、発癌物質のTrp-P-2および細胞成長因子のTGF-αは、歯胚の歯原性上皮細胞の増殖を促進することが推測された。
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