骨の基質タンパク質の1つである骨シアロ・タンパク質(BSP)の、細胞接着促進効果について、モデルペプチドを用いて検討した。モデルペプチドとしては、BSPのアパタイト結合配列(E_7)と細胞接着配列(RGD)のみを含むペプチド(E_7PRGDT)を合成した。合成ハイドロキシアパタイト結晶を、BSP等のタンパク質または上記のモデルペプチドでコートして、それに骨芽細胞または破骨細胞を接着させた。骨芽細胞としては、MC3T3-E1細胞を用いた。破骨細胞としては、ラット骨髄細胞より活性型ビタミンDで分化させたものを用いた。BSPでコートしたハイドロキシアパタイト結晶には、いずれの細胞もよく接着した。この接着活性は過剰のRGDペプチドによって阻害された。これに対して、コートしない結晶またはアルブミンでコートした結晶に対しては、いずれの細胞の接着も見られなかった。BSPは細胞表面のインテグリンを介して、この細胞を接着させると考えられる。BSPモデルペプチドも、BSPと同様にこれらの細胞の結晶への接着を促進した。このペプチドはアパタイト結合配列と細胞接着配列しか含まないので、この接着活性のためにはこの両配列だけで十分であることがわかる。おそらくこのペプチドは、アパタイト結合配列部分で結晶に吸着し、RGD配列部分が環境に露出して、細胞のインテグリンと相互作用するのであろう。
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