研究概要 |
軟骨細胞の増殖分化に関わる2型インスリン様成長因子(IGF-2)の発現機構を究明する目的で、ヒト軟骨肉腫由来の軟骨細胞様細胞株HCS-2/8細胞でのIGF:2の4個のプロモータからの発現変動を定量的に把握する方法をまず確立した。Promoter-1(P-1:Exon-1(Ex-1),Ex-2,Ex-3,Ex-7,Ex-8,Ex-9)では408base、P-2(Ex-4,Ex-7,Ex-8,Ex-9)では277base、P-3(Ex-5,Ex-7,Ex-8,Ex-9)では211base、P-4(Ex-6,Ex-7,Ex-8,Ex-9)では121base、となるように設定した各プロモータ産物に対するプライマーセットを準備し、10%のウシ胎仔血清を含むα-MEM中で4週間培養したHCS-2/8細胞でのGF-2の各プロモータからの発現量を調べた。そのときの結果は4(P-1):0.4(P-2):19(P-3):10(P-4)であり、骨系細胞の分化因子であるアスコルビン酸の添加によってその相対比は9(P-1):0.8(P-2):34(P-3):12(P-4)と変動した。そのP-1,P-2,P-3では約2倍となり、P-4では1.2倍となる変動の意味合いをさらに検討するために、現在、レチノイン酸、成長ホルモン等の同様な研究を行っている。 一方、IGF-2の4個の各プロモータの転写制御因子の問題は、P-3以外では転写制御領域の塩基配列が未だ決定できていない状態であるが、、その遺伝子の発現状態とインプリンティング状態との間の関連性はかなり究明されてきている。HCS-2/8細胞の染色体11p15.3領域でのp53^<KIP2>,IGF-2,H19のインプリンティング.クラスターの変動とIGF-2発現量の変動との間には、特にこのHCS-2/8細胞が肉腫由来細胞であるといった特徴は観測できなかった(第17回国際生化学・分子生物学会議(サンフランシスコ:8.24-29,1997)、第56回日本癌学会総会(京都:9.25-27,1997)で発表。論文作成中)。
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