研究概要 |
好中球は骨髄での分化し末梢血へと移行、そして多くの好中球は口腔内あるいは肺胞、腸管内へ移行する。この体腔内へ遊出した細胞はその場での生体防御に重要な機能をもつ。好中球の機能は異物・細菌などの貪食作用による生体防御とともに、その細胞内容物の逸脱は組織傷害の誘因ともなる二面性を持っている。好中球のアポトーシスは細胞内容物の逸脱による組織傷害を抑制し、炎症の終熄、あるいは炎症の増悪の抑制にかかわると考えられる(Bull.Tokyo Dental College,in press.1997)。したがって口腔内、特に歯肉溝内ではその制御が重要と考えられる。そのため口腔内に遊出した好中球のアポトーシスの機構を明かにする目的で口腔内の細胞からPolymorphoprepの重層遠心法により好中球を調整し、種々条件下での細胞死の動向をアポトーシスの基本的な特徴であるDNA切断を指標として基礎的実験を行なった。好中球を血清を含む培養液で培養すると少なくとも8時間では何らDNAの切断をきたさない。一方、T細胞はDNA切断が培養6時間後より誘発される。好中球を無血清培養液で培養すると4時間より生存率の低下とともにアガロース電気泳動で軽度のDNAのスメア-状の分解が観察された。Actinimycin D,cycloheximideはT細胞のアポトーシスを抑制するが、これらは短時間で好中球にアポトーシスを誘発する。単球、マクロファージでは数時間の培養では何ら変化がみられないが、長時間の培養により典型的なアポトーシスが引き起こされ典型的なアポトーシスが観察された。これらのことより、炎症細胞でもそれぞれ異なった機構が想定される。しかし、好中球のアポトーシスの判断には(1)口腔内好中球の多様性(プライミングの差異)、(2)必ずしもDNA切断を伴うアポトーシスではないことなど非常に難しい点が指摘され、それらの問題点について検討中である。
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