研究概要 |
口腔へ遊出した好中球はその場での重要な生体防御をもつとともに,その細胞内顆粒の放出や活性酸素の生成によって組織障害を誘発する.アポトーシスは組織障害性を抑制し歯周炎の終熄,あるいは炎症の増悪の抑制にかかわると考えられる.口腔洗浄液からpolymorphoprepの重層遠心法により調製した好中球は,末梢好中球に比較しアポトーシス(腫瘍壊死因子,actinomycin Dなどによる誘導)に抵抗性でラダー状DNA切断は観察されない.末梢好中球をfMLP,TPAにて処理してもアポトーシスへの抵抗性は観察されない.またいずれもカスペースとプロテアソームの阻害剤で影響が見られなかった.口腔内能中球のアポトーシス抵抗性は単なるプライミングやDNA切断の活性化機構の差異では説明できず,口腔内逸脱過程での接着因子の発現とそれによるシグナルに夜修飾と歯肉構内のなんらかの抑制因子を考慮しなければならない.またこの抵抗性が真に口腔内での好中球の機能の増強に関与しているかは今後の問題である.HL-60は顆粒状球への分化し終末分化としてアポトーシスが観察されるがカスペース阻害剤はその進行を阻害し、プロテアソーム阻害剤はむしろ促進的に作用に細胞内プロテアーゼの複雑の制御機構が推察された.末梢T細胞はたんぱく合成に依存した系と非依存の系によりアポトーシスが制御されている.一方,単球,マクロファージは長時間の培養により典型的なDNA切断を伴うアポトーシスが引き起こされる.これらのことから歯周炎炎症巣における炎症細胞はそれぞれ異なったアポトーシス制御機構が想定され、それらが総合的に歯周炎が修飾されていると考えねばならないだろう.
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