研究概要 |
エナメル質へのカルシウムの輸送機構を明らかにするためにCa-ATPaseの阻害剤であるvanadateを投与したラットに^<45>Caを投与してオートラジオグラフィーを行い、下顎切歯エナメル質へのカルシウムの輸送状態を観察した。 0.04%カルセインを投与した9日齢ラットの静脈内にvanadate(10,1.0,0.1,0.01,0.001mM)を投与し、投与2分後に^<45>Caを静脈内に200μCi投与した。10分後に-90℃のヘキサン中で全身凍結し、下顎切歯から厚さ7μmの凍結乾燥切片を作製した。乾燥切片にX線フィルム(IX-50)を密着し、オートラジオグラムを作製した。コントロール試料としては、^<45>Caのみを投与したラットを用いて同様のオートラジオグラフィーを行った。 10mMのvanadateと投与したラットは5分後に死亡したが、1mMの場合は5時間経過しても外観的に変化は認められなかった。vanadateの濃度が低い場合は、コントロールと同様に最も強いラベルが成熟期のRA領域に、次いでSA領域、基質形成期の順に弱くなっていたが、全体的にコントロールよりラベルは弱くなっていたvanadateの濃度が高い場合、気質形成期と成熟期のSA領域のエナメル質に比較的強いラベルが認められたが、RA領域のラベルは、それらより弱くなっていた。また、細胞層のラベルもかなり弱くなっていた。 これらの結果からRA領域では、カルシウムはエナメル芽細胞によりエナメル質に輸送され、その輸送はvanadateにより影響を受けることが示された。
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