研究概要 |
目的:トランスフォーミング成長因子α、インシュリン様成長因子IIと筋肉特異的転写因子によるマウス舌骨格筋発生分化調節機構を明らかにする目的で以下の実験を行った。 材料及び方法: 1 受精11日後のICRマウス胎児より舌を含む下顎を摘出し、無血清、化学合成培養液を用いて8日間培養した。10,20,40ng/mlの濃度になるようトランスフォーミング成長因子α、または50,100,200ng/mlの濃度になるようインシュリン様成長因子IIを培養液中に添加した。 2 培養終了後、下顎よりRNAを精製し、逆転写を行った後、competitive PCR法を用いて、デスミンと骨格筋特異的転写因子(MyoD,Myf5,myogenin,MRF4)の発現を測定した。デスミンは筋肉分化の指標として用いた。 結果および考察: 1 トランスフォーミング成長因子αは約110%のデスミンmRNAの増加、約750%のMyoD mRNAの増加、約150%のmyogenin mRNAの増加を引き起こした。一方、トランスフォーミング成長因子αによる約50%のMyf5の減少が観察された。MRF4は検出されなかった。以上のデータによりトランスフォーミング成長因子αはMyoDとmyogeninの転写を制御することによりデスミンの転写および筋肉発生を促進している可能性が示唆された。 2 インシュリン様成長因子IIはデスミンmRNAレベルに統計的に有意な変化は引き起こさなかった。培養筋芽細胞系においてはインシュリン様成長因子IIは筋肉の発生分化を促進するという報告が多くあり、今回の実験の結果はそれらの報告とは異なっている。この原因については、発生中のマウス舌筋肉中にはインシュリン様成長因子の作用を阻害するインシュリン様成長因子結合蛋白質が多く存在しているためと考えられる。
|