研究概要 |
平成8年度の科学研究費に基ずく研究概要は以下のとおりである。 下顎頭を含む顎関節における形態変化の発生には,様々な要因の関与が報告されている。下顎頭後面に散見される陥凹像(Concavity)もそのうちの一つであるが,その成因や臨床的意義は明らかにされていない。また,検出される割合も観察に使われた撮影方法および検討対象によって様々である。そこで,X線像の信頼性を検討することを目的として,人屍体標本のX線写真と組織切片を比較検討した。その結果,陥凹には両者の関係において3種類のものが存在した。すなわち,X線像と組織像で共に骨皮質の認められるもの,共に認められないもの,さらにX線像では認められるが,組織像では存在しないものであった。このことは,屍体標本でさえ両者の一致しないもののあることが明らかになった。一方,臨床的には陥凹像が経時的に変化しない場合と短時間のうちに変化する場合を経験している。さらに,断層X線写真とMR画像の両者を比較した患者症例の場合では,X線写真において骨皮質の明瞭なもの,不明瞭なもの,さらに部分的に不明瞭の疑われるものが存在した。MR画像と対比すると陥凹の程度が大きくなったり,骨皮質が不明瞭になるにしたがって,関節円板は復位のない前方転位の状態にある傾向が認められた。これらは,下顎頭の形態変化に関節円板が密接に関係していることを示唆するものである。 以上の研究結果の概要の一端は,裏面の別掲のように報告している。
|