研究概要 |
表現形質や増殖,分化が比較的よく解明されている造腫瘍性ヒト唾液腺導管上皮細胞株HSG細胞の遊離ヌクレオチドを高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で測定した。 HSG細胞の培養は,イ-グルの最小必須倍地に仔牛血清とL-グルタミンを加えた増殖培養液を用い炭酸ガスを含む37℃にて実施した。被検培養細胞約10^7個にトリクロル酢酸(final 0.3M,0.5ml)を加え,30分後遠心分離し得られる上清を粗試料とした。この細胞粗抽出試料中のリボヌクレオチドの酸化反応を行い,直ちにHPLCにてデオキシリボヌクレオチド三リン酸(DNAプール)を測定した。 HPLCによるDNAプールの測定は,Waters 510 Pump,LC Spectrometer Model 481(254nmで測定)を用いた。クロマトグラフィーは,Partisil-10 SAX(4.6x250mm)を用い,0.4Mリン酸アンモニウム緩衝液,pH2.5(0.4Mリン酸にて調整)を溶出液(1.5ml/min)とした。4種類のデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dCTP,dATP,dTTP,dGTP)の濃度は,標準品の溶出時間およびピーク面積から計算した。経代培養時トリプシン処理で集めた細胞のデオキシリボヌクレオチド三リン酸濃度は,それぞれで76,23,15,5pmol/10^6個であった。最小検出限界は,dCTP,dATP,dTTP,dGTPそれぞれ14,3,9,4pmolであった。 同調培養による細胞内のデオキシリボヌクレオチド三リン酸(DNAプール)の急激な変動を時系列的に測定するためには,被検培養細胞をドライアイス・アセトンにて瞬時に凍結しトリクロル酢酸処理しなければならない。この場合,細胞処理液量が多くなり試料中のヌクレオチド濃度が低くなる。また,細胞粗抽出液をインジェクトするためカラムの再生を頻繁に行わなければならない。これらを回避するため,前処理用固相抽出カラム(Sep-Pak Cartridges)による濃縮・精製が有効であることが分かった。
|