研究概要 |
培養細胞粗抽出液中の極微量のdNTPをHPLCによるイオンクロマト法で直接測定する場合,測定法に種々の問題点が認められた.そこで,細胞からのdNTPの抽出法,多量に混在するrNTPの酸化処理法および抽出したdNTPの精製・濃縮などについて,再検討した.その結果,dNTP抽出法として,TCA,ついで70%アルコールによる抽出が効率良く,rNTPの酸化処理法としてGarrettらの方法(ただし,dGuOを添加した)が副反応が少なかった.また,前処理カラム(Sep-Pak)による精製・濃縮はTCAを除去できる場合に効果的であることがわかった. 2細胞周期を経た細胞が50%以上得られる62時間以上経過した種々の状態のHSG細胞内のdNTP濃度を測定した.4段階における細胞内のdCTP,dATP,dTTP,dGTPの濃度は,それぞれ5.3±2.9,13.7±5.9,26.3±11.5,6.2±4.4pmol/106個であり,培養細胞の細胞周期とそのぞれのdNTP濃度の関係は時間とともにかなり変化していることが考えられた.また,核内に共存するrNTP(TCA抽出の場合,CTP,ATP,UTP,GTPそれぞれの濃度は11,83,36,21nmol/106個)はdNTPに比べ極めて高濃度であった.S-49細胞での報告と比べた場合,rNTP濃度はHSG細胞のそれよりもかなり低く,dNTP濃度はHSG細胞のそれよりもかなり高濃度であった.HSG細胞ではrNTがdNTPの200倍以上存在するため,rNTPの酸化反応による除去がより重要な問題点としてあげられる.また,dNTP濃度が低く,ピーク面積が小さいため,不純物を多量に含む素抽出液を直接イオン交換カラムを用いるHPLCで測定する場合,まだその測定方法に多くの問題点が残った.
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