歯を介してのメカニカルストレスによって引き起こされる骨の改造現象、なかでも破骨細胞の分化、機能発現における免疫機構の関与を明らかにする目的で、ラット臼歯歯間ゴム片を挿入して歯に近遠心方向への外力を加え、周囲歯槽骨での免疫担当細胞の動態を、破骨細胞の出現状況と対比しながら検討した。 1.第一臼歯根間中隔において、無処置対照群ではほとんど認められなかった酒石酸耐性酸性ホスファターゼ陽性破骨細胞およびその単核前駆細胞は、ゴム片挿入後6時間で有意に出現し、12時間から24時間目にかけて著しい増加を示した。 2.単球・マクロファージ系細胞を認識する2種類の抗体陽性細胞は無処置対照群でも一定数存在したが、ゴム片挿入後時間の経過とともに破骨細胞に類似した増加傾向を示した。両抗体陽性細胞の出現状況の比較から、増加の主体は組織在住性マクロファージである可能性が示唆された。 3.各種Tーリンパ球のサブセットを認識する抗体を用いた検索結果から、ゴム片挿入によるメカニカルストレスに対する反応としてのTリンパ球の出現はほとんどないものと考えられた。 以上の結果から、メカニカルストレスへの反応としての破骨細胞の出現に関与するのは、主として組織在住マクロファージであり、抗原認識・Tリンパ球活性化を介しての関与の可能性はないことが示唆された。
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