Porphyromonas gingivalisなどの歯周病原性細菌感染によって産生される特異抗体は、歯周病患者の感染防御機構に中心的役割を占めるとされるが、感染免疫を体液性免疫のみに依存することには限度がある。そこで、外来の異物の侵入に対処する第一次防御機構としての好中球による貧食・殺菌機構において、r40-kDa OMP抗体のオプソニン効果をin vitroで研究した。ヒト末梢血からFicoll-Hypaque法で好中球を分取するには、大量の新鮮血を要し、しかも、個人により好中球機能に差があるなど、問題があった。また、末梢血好中球はプライミングされておらず比較的不活性であり、特に受容体を介した刺激に対して反応性が極めて乏しいと思われた。そこで、HL-60cell lineをDMSOで処理し、成熟な好中球機能を有する細胞に分化させ、好中球機能を有する細胞モデルを作成した。DMSO-indued HL-60細胞はr40-kDa OMP抗体と補体血清の存在下にP.gingivalisを貧食作用を増強した。また、r40-kDa OMP抗体によるオプソニン効果を利用してP.gingivalisを効果的に貧食したDMSO-indued HL-60細胞は取り込んだP.gingivalisを有効に殺菌した。この機構については現在研究中である。好中球表面上の補体C3bリセプターはclassical-およびalternative pathwaysの両方により活性化され、r40-kDa OMP抗体と共に、補体の活性化がP.gingivalisの貧食・殺菌効果に関与していると示唆する結果を得た。この機構には情報伝達路のプロテインキナーゼCが関与すると考え、研究中である。確立したin vitroモデル系を将来、ヒト口腔内好中球への実験系に拡大してr40-kDa OMP抗体による好中球機能の賦括作用を研究する計画である。
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