研究概要 |
本研究ではGM-CSF産生腫瘍細胞を接種した担癌マウスの脾臓から樹状細胞を分離、培養する方法を開発し、それにより得られた樹状細胞はヒトの末梢血より分離したT細胞を活性化しうることが示された。さらに樹状細胞,T細胞、U937(ヒト単球 系細胞株)の3種類の細胞を共培養するとT細胞は強力に活性化されるという興味深い結果が得られた。そこでこの3種類の細胞を共培養した後にハムスターに免疫しモノクローナル抗体を樹立した。それらのなかからT細胞活性化を修飾するような抗体をスクリーニングし約50種類のモノクローナル抗体を得た。そして本期間中には12H6、28G5の2つの抗体に注目し解析をおこなった。2つの抗体ともに樹状細胞に強く結合するが、U937にはわずかに結合し、T細胞には結合しない。また、T細胞と樹状細胞、U937を共培養した時に生ずるT細胞の活性化を約50%に減少させた。次に抗原提示細胞に発現しておりT細胞活性化にすでに関与することが知られている分子であるICAM-1、LFA-3、CD80、CD86に対する結合を調べたが、2つの抗体ともにいずれの分子にも結合しなかった。他の細胞への結合を調べたところ、LCL(ヒトB細胞)、P388D1(マウスマクロファージ前駆細胞)には結合しなかったが、A20(マウスB細胞)には12H6、28G5ともに樹状細胞と同程度に強く結合した。A20を用いて免疫沈降をおこなったところ2つの抗体ともに約35Kdの分子を認識していることが分かった。現在、A20のcDNAライブラリーをパニングによりスクリーニングする方法とA20のレトロウイルスライブラリーを用いたセルソーテイングの2つのアプローチにより12H6、28G5が認識する分子のcDNAクローニングを進めている。
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