研究概要 |
ヒト歯肉由来線維芽細胞に対して、歯周病関連細菌で刺激した時の一酸化窒素産生酵素の誘導を観察した。歯周病関連細菌としては、Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Fusobacterium nucleatum, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Capnocytophaga sputigenaを用いた。10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地を用いて継代培養している線維芽細胞を、スライドグラス上に移し、RPMI1640培地のみで2日培養した。このRPMI1640培地は、一酸化窒素の基質となるアミノ酸アルギニンを含有するものと含有しないものの2種類を使用した。リン酸緩衝液に懸濁した細菌液を培養液中に加え、線維芽細胞と細菌を反応させた。一定時間反応させた後、培養細胞をそのままスライドグラス上で固定し、蛍光抗体法で染色し、落射型蛍光顕微鏡で観察した。一酸化窒素産生酵素は由来や性質から、3種類に分類されているため、特異性を観察するために3種類の酵素それぞれについてモノクローナル抗体を用いた。その結果、アルギニンを含んだ培地で培養した場合、含まない培地で培養した場合より誘導型の一酸化窒素産生酵素が線維芽細胞の細胞質全体に分布し、増加する傾向にあった。刺激する細菌の種類ではあまり変化がなかった。神経型、血管内皮型の一酸化窒素産生酵素は、あまり存在せず、局在が漠然としていた。一酸化窒素産生酵素は、継代している時に既に存在している可能性があり、組織学的検討とともに、酵素活性からの検討を加える必要がある。そのような観点から、一酸化窒素測定用電極を用いて、直接的に一酸化窒素(NO)を検出する位置を組立て、校正を行った。刺激に反応して線維芽細胞から放出されるNOは極微量なため、電極で測定するにはノイズが入り易く、厳重なシールドを必要とした。
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