研究概要 |
Er;YAGレーザーの逆根管充填窩洞形成への臨床応用の可能性を検討するため,基礎的検討を行った. 〈実験方法〉ヒト単根抜去歯40歯を用いた.通法通り,根管形成,根管充填を行った後,根尖3mmを切除した.20歯についてはEr:YAGレーザーを用い,70mJ10ppsの照射条件で注水下にて逆根管充填窩洞形成を行った.残りの20歯については,対照として超音波レトロチップを用いて同様に逆根管充填窩洞形成を行った.Er:YAGレーザー,超音波両群について形成時間の比較,根尖切除面における根管の断面積増加率,窩洞形態の走査電子顕微鏡による観察,および両群の7歯ずつについてはEBAセメントによる逆根管充填を行い0.1%メチレンブルー水溶液に3日間浸漬し,窩壁の色素浸透性の比較を行った. 〈結果および考察〉1.Er:YAGレーザー群,超音波群それぞれの逆根管充填窩洞形成に要する時間は52(±27)秒,176(±62)秒であり,Er:YAGレーザー群の方が優位に短時間で形成可能であった(Mann-Whitney U-test,p〈0.0001).2.根尖切除面における根管断面積増加率はEr:YAGレーザー群で212(±72)%,超音波群で198(±58)%であり,両群間には差は見られなかった(t-test,p=0.338).3.電子顕微鏡による観察ではEr:YAGレーザーによる形成面ではdebris,ガッタパ-チャ,シーラーは観察されなかった.逆根管充填窩洞の外形は不整形であり,窩縁部で広がっていた.一方,超音波による窩洞形成では窩壁にdebrisとシーラーが観察された.窩洞外形は円形であり,窩洞形態は円筒状であった. 4.根尖切除面からの色素浸透距離はEr:YAGレーザー群で1.01(±0.18)mm,超音波群で1.30(±0.61)mmであり,両群間に差は見られなかった(t-test,p=0.253). 以上の結果からEr:YAGレーザーの逆根充填窩洞形成への臨床応用の可能性が示唆された.
|