研究概要 |
本研究では、100名の成人性歯周炎患者及び105名の健常者における末梢血多形核白血球のFcγレセプターIIa,IIIbについて、それぞれのジェノタイプをフローサイトメーター並びにPCR法を用いて決定した。その結果、どのFcγレセプターのジェノタイプの分布も歯周炎患者と健常者との間に有意差は認められず、Fcγレセプタージェノタイプそのものは、歯周炎の発症には直接関与しないことが示唆された。また、メインテナンス中にみられた歯周炎再発は、FcγレセプターIIIb-NA2ジェノタイプ患者に有意に多く認められた(オッズ比:4.29、信頼区間:1.19〜16.24)。更に、1年当たりの歯周炎再発率について調べたところ、FcγレセプターIIIb-NA2/NA2タイプ(mean±SE:4.48±0.90%)及びIIIb-NA1/NA2タイプ患者(4.34±0.82%)が、IIIb-NA1/NA1タイプ患者(1.71±0.32%)に比べて有意に高い再発率を示した。また、統計学的有意差は認められなかったものの、FcγレセプターIIa-R/R131タイプ患者(7.38±3.53%)もIIa-H/H131タイプ患者(2.59±0.40%)に比べて非常に高い再発率を示した。Fcγレセプタージェノタイプ間で血清の各IgGサブクラス濃度や臨床指数(初診時、メインテナンス開始時)及び喫煙率に有意な差がみられなかった事から、FcγレセプターIIIb-NA2ジェノタイプは、歯周炎再発の危険因子になりうることが示唆された。今後は、より的確な歯周炎診断を確立するために、その他のFcγレセプタージェノタイプを含めた総合的な疫学的検索が必要と思われる。
|