研究概要 |
歯根膜線維芽細胞(PLF)の硬組織形成能は,歯肉線維芽細胞(GF)との比較で明確にされてきた。PLFの硬組織形成には活性型ビタミンD3レセプター(VDR)を介する制御が重要な役割を果たすこと,および,PLFは細胞密度が高くなるとVDRの発現を誘導する因子を自ら産生することを我々はすでに明らかにした。本研究では,PLFが産生するVDR誘導因子の遺伝子を検索することで,その性状を明らかにすることを当初の目的とした。しかし,PLFの細胞機能は本因子を含む複数の因子の関わり合いによって制御されていることが予想されるため,PLFのみが特異的に発現する遺伝子群をすべて明らかにすることで,PLFの硬組織形成細胞としての特徴付けを行うことに目的を変更した。 本年度は,confluentのPLFの遺伝子群からGFの遺伝子群をサブトラクトしたcDNAライブラリーを作製し,サザンハイブリダイゼイション法によって,PLFに特異的と思われる33種類のクローンを得た。これらについてDNAシーケンスを行い,その塩基配列をGenBankの遺伝子データーベースと照合した。その結果,31種類は既知の遺伝子と相同性の高いクローンであり,2種類は未知のものであった。また,それらの中には,Nm23protein,V-fos transformation effectorproteinおよびmyeloma differential proteinなどの細胞の分化に関わる特徴的な遺伝子群と相同性の高いクローンが含まれていた。今後はこれら遺伝子群が実際にPLFのどのような分化段階において発現され,細胞機能の制御に関わっているのかを調べてゆく必要がある。
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