根尖牲歯周炎局所の骨吸収過程における破骨細胞系細胞と骨芽細胞系細胞との細胞間相互作用については不明な点が多く残されている。そこで、本研究では破骨細胞の活性化に関与すると考えられる細胞接着分子の解析を目的として、骨吸収部位におけるleukocyte function associated antigen-1(LFA-1)およびintercellular cell adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現と強力な破骨細胞活性化因子であるIL-1の発現との関連牲について免疫組織学的に検討した。その結果、病巣の拡大する3〜14日目では骨面にTRAP陽性の破骨細胞が多数出現し、その周囲にはTRAP陽性の円形および楕円形の形状を示す前破骨細胞とALP陽性の紡錘形の形状を示す骨芽細胞系細胞が観察された。また、病巣中に多数のIL-1βを発現したマクロファージの浸潤が認められた。さらに、破骨細胞に近接して多数のLFA-1陽性の単核円形細胞が観察されるとともに、骨吸収部位ではICAM-1の発現が血管内皮細胞、単核紡錘形細胞、単核円形細胞および一部の破骨細胞に認められた。一方、病巣の拡大が沈静化する28日目ではIL-1βの発現および破骨細胞は著しく減少し、骨面近傍におけるLFA-1およびICAM-1の発現は極めて減弱していた。以上のことより、根尖病巣の拡大に、IL-1βの発現が密接に関連しており、LFA-1およびICAM-1の発現による細胞間相互作用が破骨細胞性骨吸収の活性化に関与している可能性が示唆された。
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