研究概要 |
根尖性歯周炎などの骨吸収を伴う疾患においては、破骨細胞が重要な役割を担っている。しかしながら、根尖性歯周炎局所における骨吸収過程については不明な点が多く残されている。そこで、本研究では破骨細胞の活性化に関与すると考えられる細胞接着分子の解析を目的として、特に骨吸収部位におけるintercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)およびleukocyte function associated antigen-1(LFA-1)の発現と強力な破骨細胞活性因子であるIL-1の発現との関連性について免疫組織学的に検討した。その結果、ラット根尖病変では好中球浸潤の活発化とIL-1βを発現したマクロファージの増加により、破骨細胞性骨吸収は活性化し急激な病巣の拡大が認められた。また、骨吸収部位ではICAM-1発現細胞およびLFA-1発現細胞の増加が認められ、破骨細胞はICAM-1(+),LFA-1(-)、前破骨細胞はICAM-1(+),LFA-1(+)、骨芽細胞様細胞はICAM-1(+),LFA-1(-)を示した。一方、骨形成期ではIL-1β発現細胞の著しい減少が観察されるとともに、骨吸収期に比較してICAM-1発現細胞およびLFA-1発現細胞の減少が認められた。また、骨芽細胞および前骨芽細胞はICAM-1(-),LFA-1(-)を示した。以上のことより、根尖性歯周炎における活発な骨吸収部位ではIL-1βを発現したマクロファージの増加に伴いICAM-1およびLFA-1が発現されることにより、骨芽細胞様細胞と前破骨細胞、前破骨細胞と前破骨細胞、破骨細胞と前破骨細胞といった骨系細胞間の相互作用が惹起され破骨細胞は分化、成熟する可能性が示唆された。
|