研究概要 |
歯周疾患の発症と病態の進行には、歯周病原細菌の侵襲と、それに対する生体の防御機構が深く関与している。多形核白血球(PMNs)は健康な付着上皮や歯肉溝あるいは、辺縁性歯周炎におけるポケット滲出液中に多数存在し、生体防御としての重要な役割を担っている。このことは、PMNs機能に障害のあるヒトに重症な歯周疾患が認められることからも理解できる。一方、PMNsは防御的役割と同時に炎症局所においては、組織障害性に働くと考えられている。このPMNsによる組織障害性を解明することは、歯周疾患の発症機序を解明するうえで重要である。そこで、今回はヒト歯肉由来上皮細胞(HGE)、ヒト歯肉由来線維芽細胞(HGF)に対して、健康なヒト末梢血由来PMNsを直接作用させ細胞障害率について、各種細胞間での相違を検索した。 1.HGEに1000ng/mlLPS)Salmonella typhosa)と10^6MFMLPの同時刺激によって、コントロール(D-MEM)と比較し、統計学的に有意(p<0.05)に高い細胞障害率を示した。 2.HGFの単層培養に対してもLPSとFMLPの同時刺激により無刺激と比較し高い細胞障害率が認められた。 3.HGE,HGFに対する細胞障害率はHGFの方が高い傾向を示すものの、統計学的に有意な差は認められなかった。 以上のことは、歯周病の発症にPMNsが関与していることを示唆するものである。また、この実験系での障害の原因としてPMNsがLPSとFMLP同時刺激により、プロテアーゼ活性酸素を産生することによると思われる。なお、これの究明は次年度に計画している。
|