研究概要 |
健康な付着上皮や歯肉溝中に存在する多形核白血球(PMNs)は、生体防御機構の最前線において重要な役割を担っている。一方、炎症局所におけるPMNsの過剰反応は、組織傷害性に働くことが示されている。このPMNsによる傷害機構を歯周組織由来細胞で検索することは、歯周疾患の発症機序を解明するうえで重要である。そこで、前年度はヒト歯肉由来上皮細胞(HGE)、ヒト歯肉由来線維芽細胞(HGF)に対してPMNsが細胞傷害性に働くことを認めた。本年度は本システムにおける細胞傷害性の機構を、活性酸素の影響について検索した。 1.ポジティブコントロールであるHGFの単層培養に1000ng/mlLPS(Salmonella typhosa)と10^6MFMLPの同時刺激は、コントロール(D-MEM)と比較し、統計学的に有意(p<0.05)に高い細胞傷害率を示した。 2.HGFの単層培養に対し、LPSとFMLPの同時刺激時にO_2^-の消去剤であるSOD(10μg/ml:3,300U/μg)とH_2O_2の消去剤であるCatalase(100μg/ml:6,900U/mg)を別々に添加し、ポジティブコントロールと比較した結果、細胞傷害抑制率に有意な差は認められなかった。 3.HGFの単層培養に対し、LPSとFMLPの同時刺激時にSOD(10μg/ml)とCatalase(100μg/ml:6,900U/mg)を同時添加し、ポジティブコントロールと比較した結果、細胞傷害抑制率に有意な差は認められなかった。 以上のことは、HGF単層培養に1000ng/mlLPS(Salmonella typhosa)と10^6MFMLPの同時刺激の細胞傷害性の系において活性酸素のO_2^-とH_2O_2とは別の活性酸素種によるか、または、PMN由来の酵素によるものと思われる。
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