本研究の目的は、顎変形症患者の顎を含めた顔面形態の変形を視覚的に認識するために、顔面形態の非対称性の有無について、判断基準を明らかにすることを目的とした。 研究に用いる装置は、顔貌を一定の規格のもとに、正面・左右側面の3方面から同時に撮影できる顔面規格撮影装置である。この装置を用いて視覚的にとらえた顔面形態の特徴を検討し、さらに顔面形態を構成する各部位の顔面正中に対する位置関係を調べることにより、顔面形態の非対称性の有無を明らかにしようとした。 視覚的に人の顔面形態と認識する場合、目・鼻・口などの顔面を構成している個々の要素の大きさや位置関係が、共に顔面正中に対する比率や大きさなどにおいてある範囲内で適切な配置となっていると考えられる。 そこで顔面形態が対称と思われる5名の成人男性を顔面規格撮影装置を用いて顔面写真を撮影し、正面写真を用いて、顔面正中線の設定を行った。顔面正中線は左右内眼角点の中点と上唇点を結ぶ線とした。顔面正中線の設定に用いた5名の成人男性について、顔面正中線を基準線として左右外眼角点間・左右外眼角点と鼻下点・鼻下点と頤下点の距離の比を調べた結果、ほぼ一定の比率であった。このことより顔面形態が対称と認識される場合、顔面を構成する目・鼻・口などが顔面正中に対し一定の範囲で配置されていることが判明した。
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