研究分担者 |
佐藤 華織 北海道大学, 歯学部附属病院, 助手 (40281828)
箕輪 和行 北海道大学, 歯学部, 助手 (30209845)
小松 孝雪 北海道大学, 歯学部, 助手 (90271668)
井上 農夫男 北海道大学, 歯学部附属病院, 助教授 (20091415)
戸塚 靖則 北海道大学, 歯学部, 教授 (00109456)
|
研究概要 |
1.対象とした拘縮性伸展障害を有する顎関節症患者では一部を除き疼痛の程度は小さく,大部分の患者が痛みよりも引張られる,あるいは硬くてこれ以上開けられないという表現をしており,咀嚼時など筋収縮時に痛みを有する典型的な筋痛患者とは異なる臨床所見を示した. 2.咬筋筋電図では,(1)安静時の異常筋放電が見られないこと,(2)咀嚼リズムのCV値が比較的安定していること,(3)咀嚼時の筋放電持続時間の割合は増大していないことが示され,明らかな閉口時の過剰筋活動の所見はなかった.一方,開口時における咬筋の異常筋活動が多く認められた. 3.31P-magnetic resonance spectroscopy 検査を行ない咬筋組織内のエネルギーレベル代謝を分析した結果,筋組織内のエネルギー源であるPCrのPiに対する比率の低下が認められエネルギーの低下が示唆された. 以上の結果から,顎関節疾患者における咬筋の拘縮性伸展障害は筋痛と発現機序が異なる可能性が示唆された.その発現機序の一つとして,クローズドロックなど何らかの開口制限により,二次的に筋長の短縮固定化が生じ,より重度の開口障害を引き起した可能性が考えられた.その際,閉口筋の開口時の異常収縮を伴う場合が多く,さらに開口を困難にするものと思われた.このような発現機序においては,安静状態の保持など,閉口時の過剰な筋緊張の防止を目的とする筋痛の一般的な治療法だけでは不十分であり積極的な筋の伸展訓練が必要と考えられた.さらに,一次的な開口障害が長期化するほど筋の拘縮性伸展障害は悪化する可能性が高いことから,開口障害の一次的な原因への早期の対応が筋の拘縮性伸展障害の発現防止には重要と思われた.また,これらの患者では咬筋のエネルギーレベルが低下していることから,筋のマッサージなど末梢の血液循環を改善する治療法の必要性は高いと思われた.
|