研究概要 |
緒言 修復用コンポジットレジンと象牙質との接着強さとの耐久性の向上および象牙質脱灰層をもとの組織に回復させることを目的た,アパタイト析出型プライマーの開発とその接着効果および接着機構の解明を行った。 材料および方法 1.プライマー:硝酸カルシウム,HEMAおよび水から成るA液とリン酸2アンモニウム,アミノ酸メタクリレート(N-AAsp),光増感触媒,エタノール,水から成るB液を調整した。 2.プライマー作用脱灰象牙質のアパタイト分析:クエン酸処理した象牙質に1のプライマーを60秒間作用させた後に資料を割断し,その面にカーボンコーティングを施してから脱灰層をEDX分析した。 3.象牙質被着面処理:ヒト象牙質に4φ×2mmのポリエチレンリングを固定してクエン酸20秒処理した後,プライマーA液およびB液を混和して窩洞底面に60秒間作用させた。 4.接着強さの測定:3の被着面に市販ボンディング材(クラレ社,ホトボンド)を塗布し,コンポジットレジン(クラレ社,APX)を充填した。次に37℃水中24時間浸漬後,オートグラフによって引張り接着強さを測定した。 結果および考察 脱灰象牙質に本試作プライマーを作用させると,コラーゲン線維間にアパタイトが析出していることが分析の結果から明らかとなった。一方,本プライマー処理象牙質被着面に対するリン酸エステル系ボンディング材の接着強さは,15±3.2MPaの値を示してコントロール(アパタイト非析出型)の9±2.5MPaと有意に差があった。この結果は,接着層にアパタイトが析出したために弾性率が向上したことおよびボンディング材の重合収縮率が減少したことなどに基因しているものと考えている。
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