研究概要 |
舌癌の治療時に発生する放射線後障害を予防するため放射線治療補助装置(スペーサー)が用いられている.しかし,従来用いられてきたガ-ゼ,コットンロール,モデリングコンパウンド,弾性印象材等のスペーサーは,製作が複雑で,安全性・装着感・耐久性・線量低減効果が劣っていた.本年度は,軽量で従来タイプのスペーサーの欠点を改善するスペーサー用材料を歯科用材料から選定するとともに,有歯顎者用および今まで顧みられていなかった無歯顎者用のスペーサー製作法を確立し,その放射線後障害予防効果を臨床的に評価することを目的として研究を行い,以下の結果を得た. 1.スペーサー製作法の確立 :有歯顎タイプおよび無歯顎タイプのスペーサーの製作術式(臨床術式,技工術式)を確立した. ・有歯顎タイプ:咬合挙上副子の製作に準じる.加熱重合レジン(アクロン・クリア)を使用. ・無歯顎タイプ:複製義歯の製作に準じる.即時重合レジン(テンプロン,トレーレジン)を使用. 2.舌癌組織内照射患者へのスペーサー応用 :放射線治療終了後,スペーサー使用のアンケート調査を行ている.平成8年には,有歯顎タイプ6症例,無歯顎タイプ11症例にスペーサーを装着した.放射線後障害について定期的に経過観察を行う予定である. 3.各種歯科用材料による放射線量低減効果の測定 :歯科用印象材,歯科用レジンを用いて厚みの違う試料を作製し,放射線量低減効果の測定したところ,放射線量低減効果を発揮するためには,厚さ10mm以上とする必要があることがわかった.
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