研究概要 |
顎関節症患者の咀嚼筋疼痛に関しては古くから研究が行われている.臨床における筋の疼痛診査法としては,従来から筋触診法が利用されているが,筋に加える手圧の程度や速度などが異なるため,定量的な診査法ではなかった.顎関節症患者の咀嚼筋疼痛を定量的に診査するために,我々はPressure Algometer(加圧計測装置)を用いて患者の咀嚼筋疼痛閾値を計測している.しかしながら従来型のものでは,計測値がラフなアナログ表示であることなどの理由から,元々バラツキが多いヒトの疼痛閾値計測に使用するには制度が劣ることから,新たな高精度の加圧計測装置が必要と思われた.今回加圧ゲージを利用した咀嚼筋疼痛閾値測定のセンサ部を開発し,センサ内部の圧ゲージからの信号をシグナルコンディショナ-(PCD100A)を介してパーソナルコンユーターに接続し,この電気信号を専用ソフトを用いることにより,詳細な解析が可能なシステムを開発した.予備実験においては,データの精度は従来より非常に向上させることが確認できた.この装置を用いて,正常被験者および顎関節症患者の咬筋,側頭筋ならびに関節包の圧痛閾値を求めたところ,顎関節症患者は正常者と比較してすべての部位において閾値が低く,とくに関節包では有意に低かった.また女性は男性より閾値が低いことがわかった.人種間の閾値の比較検討については,今後Seoul National UniversityおよびUCLAとの共同研究によりを行う予定である.
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