研究概要 |
歯科用材料,特に接着性レジンモノマーによる遅延型アレルギーの誘発に関して追求するため,まず,これまで免疫学の分野で遅延型アレルギーを誘発する標準物質とされている2,4-Dinitrofluorobenzene(Sanger's reagent;DNFB)と生体タンパクの一種であるBovine Serum Albumin(BSA)との相互作用についてNuclear Magnetic Resonance Analysisにより検討した.BSAとDNFBを混合することにより明確なChemical siftが認められ,両物質の相互作用が明らかとなった.一方,Methacyl acid(MA)による検討でも明確なChemical siftが認められ,Haptenとなりうることが示唆された. DNFB誘導遅延型アレルギーによるマウス耳介厚径の時間的推移について検討したところ,二次感作後,24時間まではほとんど変化しなかったが,その後,急速に増加し3〜4日後においてピークとなり,典型的な遅延型アレルギーのパターンを示した.また,同部位における免疫組織化学的検討は,CD4^+T細胞およびCD8^+T細胞が有意に検出されるとともに,CD8^+T細胞に比較してCD4^+T細胞が優位であり,耳介厚径の時間的推移と同様に遅延型アレルギーに特微的な傾向を示した.一方,MAでは比較的初期である24時間から耳介厚径は変化し,2日後においてピークを示した.さらに,局所におけるCD4^+T細胞,CD8^+T細胞ともに検出率はDNFB感作群よりも低く,DNFB感作群が示した典型的な遅延型アレルギーのパターンとは一致しなかった。 DNFBおよびMA皮膚二次感作後の脾臓細胞における抗体産生細胞数をEnzyme-Linked Immunospot(ELISPOT)Assayにより検討したところ,ポリクローナルな抗体産生がIgM,IgG_1,IgG_<2a>,IgG_<2b>,IgG_3,IgAとも若干の上昇を示した.これはDNFBおよびMAがAdjuvant活性をもつことを示唆している.さらに,DNFBおよびMA特異的抗体産生細胞がIgMおよびIgG1において特に顕著に認められ,Haptenの皮膚感作によって体液性免疫応答が誘導されることが示唆された.
|