研究概要 |
上顎骨欠損症例や下顎骨欠損症例では,顎義歯により咀爵,発音機能の回復を図ることになる.このうち部分床顎義歯は,多くの症例で残存歯に維持装置を使用し,補綴物の維持や支持を求める.部分床義歯の目的に人工物により,失われた咀爵器官の形態,機能の回復を図り,顎口腔系の変化や障害の発生を防止することがあげられ,この1つに残存歯を保護することが含まれる。しかし,実際は種々の欠損状態により義歯床の形状,維持装置の種類,維持歯の選択等に関して,多様な条件がありそれらの設計の原則について明確な回答は出ていない. 実際,上顎の半側骨欠損に適用する部分床顎義歯は通常の部分床義歯に比較し,鉤間線より見ても,合理的な設計が行いにくく,また,下顎の部分床顎義歯では,欠損部での支持を得にくい事が経験される.そのため,部分床顎義歯では通常の義歯より維持歯の負担が大きいことが推測される.しかし,残存歯及び,維持歯の長期的保全を図ることは,顎義歯を長時間使用させるために極めて重要な臨床要件であると考える. そこで本研究は部分床顎義歯症例について,装着後に維持歯が経時的にどのような経過を示すのか,歯の動揺度の観点から臨床的に観察し検討を行った. 被験者は手術により顎欠損があり、新規に顎義歯を作成した.上顎が7症例,下顎が4症例であった.被験歯は維持歯の33歯で行った.動揺度の評価は動的歯周組織診断装置ペリオテストTM(SIMENS社製)を用い、経日的に1年間で9時期について、ペリオテスト値を求め比較した。 この結果、顎義歯装着時で維持歯はペリオテスト値が9以下の歯が3割で、他はペリオテスト値が10以上で使用していた.顎義歯装着後,約1カ月まではペリオテスト値が変動するが、それ以後は比較的安定していた。1年後ではペリオテスト値が変化しない症例と増加した症例とが半々であった.
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