研究概要 |
コンピュータ断層撮影(CT)を利用して,顎関節骨形態の定量的評価や機能的適合性に関する情報をとらえ得る測定法を開発し,これを顆頭位の臨床診断に繋げることを目的とする。 顎関節CT画像に補綴学的に重要な基準面を設けることができるように,まずCT撮影治具を考案し,次いで基準面に対応した生体の両側顎関節骨形態を三次元的に再構築し、関節窩に対する顆頭の位置を再現して,顆頭位の情報を視覚的に且つ定量的にとらえた。結果の概要を,以下に示す。 1.CT撮影治具を用いることにより,CT画像中に,補綴学的基準面を設定することが可能になった。したがって,一回のCT(軸位断面撮影)検査で,設定した基準面に対応させた関節窩の位置と,これに対する顆頭の三次元形態を両側同時にとらえることが可能になり,生体への負担や侵襲を軽減することができた。 2.乾燥頭蓋骨を用いて,三次元座標計測装置で実測した顆頭の形状と,CT画像から再構築した顆頭形態とを比較した結果,再構築誤差は0.5mm以下であった。 3.顆頭-関節窩間距離を1mm間隔で5段階に区分して,各区分ごとに,顆頭における面積を算出し,いわゆる関節空隙量の分布図をCRT上に抽出する方法を案出した。 4.健常有歯顎者の咬頭嵌合位における顆頭-関節窩間距離が5mm以下の部位の面積は,平均284mm^2であった。そのうち,3mm以下の顆頭-関節窩間距離を示した部位の面積は平均81%を占めた。一方,関節空隙量が1mm以下の部位は平均で2%を占めるに過ぎなかった。
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