顎機能異常患者の症状のひとつに筋の疼痛があげれれるが、この筋痛に対する客観的評価法は確立されていなかった。そこで申請者は筋の圧痛閾値(咬筋および側頭筋)を測定することにより、これらの筋痛に客観的評価を与えることを目的として筋圧痛計を開発してきた。その結果、健常者の圧痛閾値から正常範囲を決定し、この正常範囲と顎機能異常者にスプリント治療を行った経過を比較検討したところ、治療前には圧痛閾値は正常範囲から外れていたが、治療とともに正常範囲内に入ることがわかった。しかし現在の正常範囲では正常か異常かの判定は可能であるが、どの部位が異常であるかの特定が困難である。 そこで、各個人において痛みの感受性を表す部位といわれる耳介後部を測定点に加え検討を行ったところ、健常者において耳介後部と咬筋および側頭筋との間に相関がみられ、この耳介後部を基準点とすれば、異常のある部位を確定できる可能性があることがわかった。さらに、この耳介後部を基準点として咬筋、側頭筋の圧痛閾値を健常者の経日変動および顎機能異常患者の治療変動で追ったところ、健常者は信頼区間内の変動であり、顎機能異常患者では初診時信頼区間外に位置していたが、治療とともに信頼区間内に入ることがわかった。 現在、この信頼区間は、95%を使用しているが、さらに異常部位判定の確度を増すため健常者および顎機能異常患者の被験者数を増し、最も妥当な信頼区間を検証中である。加えて現在までの結果につき投稿を準備している。
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