(対象と方法) 当科を受診した口腔白板症79症例を対象として、DNA ploidyおよび細胞周期と、病理組織学的所見および発癌率との関連を検索した。また、口腔扁平上皮癌59症例のDNA ploidyおよび細胞周期も検索し、白板症のそれと比較検討した。DNA ploidyの検索にはFlow cytometryを、また細胞周期の測定にはFlow cytometryとそれに接続した画像解析装置を用いた。 (結果および考察) 異数倍数体の出現率は、白板症(20/79)では扁平上皮癌(25/59)と比較して有意(p<0.05)に低かった。しかし、S-phase fractionは白板症(15.3%)と扁平上皮癌(16.3%)との間に明確な差は認められなかった。白板症における異数倍数体の出現率は、病理組織学的に高度の上皮異形成を示した症例(13/28)では、軽度の異形成を示した症例(5/33、p<0.01)および異形成を示さなかった症例(2/18、p<0.02)と比較して有意に高かった。さらに、二倍体症例においては、高度異形成症例(23.9%)では軽度異形成症例(12.4%)と比較してS-phase fractionが有意(p<0.001)に高かった。 以上の結果は、口腔白板症においては病理組織学的所見がDNA ploidyおよび細胞周期が密接に関連することを示すものであり、細胞動態がmalignant potentialと関連する可能性が示唆された。
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