加齢が骨再生機序に及ぼす影響を明らかにするために、本研究では成長期として生後14週齢、成熟期として生後30週齢の雄のウサギを用いて、下顎骨に骨空洞を形成した。骨空洞形成3、5、7、14、28日後の下顎骨を抽出し、固定・脱灰後、通法により包埋して4μmの連続切片標本を用いて、病理組織学的ならびに組織計量学的に検索し、年齢差による治癒過程の相違について検討した。成長期群では、骨空洞形成5日後には空洞窩底部より新生骨の形成がみられ、7日後から21日後にかけて急速に新生骨が増加し、28日後には皮質骨の形成により下顎骨の形態の回復がみられた。一方成熟期群では、7日後になって空洞内窩底部に新生骨の形成がみられ、28日まで徐々に新生骨が増加し、28日後には成長期群と同様に骨空洞は新生骨で満たされ、骨空洞を被覆する外骨膜により皮質骨が形成され、下顎骨の形態の回復がみられた。しかし、形成された新生骨骨梁は、成長期群では骨梁の幅が太く、その配列も比較的規則的であったのに対し、成熟期群では骨梁の幅は細く、配列も不規則であった。また、新生骨の破骨細胞による骨改造も成長期群では14日後から開始がみられ、成熟期群では21日後からであった。このように新生骨の形成開始時期、形成速度、骨改造に関して、成熟期群に遅延がみられた。新生骨骨量の組織計量学的検索では、骨空洞形成28日後まで成熟期群の方が有意に少なく、新生骨梁先端部のBrdU陽性細胞数も7日後から28日後まで全般に成熟期群の方が少なかった。以上より、成熟期群では加齢の影響による骨芽細胞の増殖活性の低下のため骨再生能が低下し、修復が遅延したことが示唆されたものの、骨空洞を被覆する外骨膜内面の細胞は、成長期群と同様に骨形成能を認め、皮質骨形成に関与することが示された。
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