20節点6面体の要素分割を行った下顎モデルに応力解析を行った。この下顎モデルに種々の条件を与え、下顎モデルの各々の部位要素における応力の集中等を検討した。荷重の大きさ、荷重の方向、荷重点によって応力の集中する要素(部位)は変化したが、荷重点における応力の集中はどの条件下でもみられ、またその他荷重以外でも応力の集中する要素(部位)が認められた。 これらの結果と臨床統計的観察とを比較検討した。外傷の臨床的な観察において上顔面部と下顔面部との比較では下顔面部の方が上顔面部より例数が多い。現時点ではそれらの外傷の際の外力の大きさ、外力の方向等について、ある程度の推測は可能であるもののほとんど確認は不可能な状態である。外力の作用点については推測が可能な症例も存在する。外力を受ける機会は下顔面部の方が多いことが明らかであるが、下顎骨を上顔面部と下顔面部とに分類すると顎面節突起部、筋突起部、および下顎枝部は上顔面部に、また下顎骨体部は下顔面部になり、このうち筋突起部、下顎枝部の骨折は例数が少なく、顎関節部と下顎骨体部の骨折が多いことが知られている。上顔面部の顎関節突起骨折は上記の事実や外力の作用点について比較的推測が可能な症例が調査等から直接的な外力の作用によらない症例が多いと推測される。応力解析結果によると荷重点以外に応力の集中がみられる要素(部位)として顎関節突起部もあげられ、臨床統計的観察からの推測と一致している。即ち、顎関節突起部は直接的な外力の作用ではなく間接的な外力の作用によって破壊されうることが示唆された。
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