三次元有限要素法を用いて下顎骨の応力解析を行った。荷重条件および拘束条件の設定を組み合わせて下顎骨の応力の変化を比較検討した。特に、下顎骨の外側から内側に至る応力変化についても検討した。すなわち、下顎骨モデルを外側要素群と内側要素群に分け、各要素において外側面中央、内側面中央の各点に応力を出力させ、外側と内部と内側での応力分布を比較検討した。 荷重の方向(前方から、斜め上方等)、荷重部位(おとがい正中部、下顎小臼歯相当部下顎下縁)、拘束条件(顎関節部、歯槽部剛性支持等)によって応力分布は変化したが、荷重部位における応力の集中は条件にかかわらず認められた。 下顎骨臼歯相当部下顎下縁に荷重を加えた場合は荷重部に大きな応力の集中が認められる他、顎関節部にも応力の集中が認められた。その他の部位にも応力の集中が認められ、これらは条件によって変化することが示された。応力の外側から内側への変化をみたとき、外側にみられた大きな応力が同部位の内部、内側では認められなかった。 おとがい正中部に荷重を加えた場合は、荷重部に大きな応力の集中が認められたが、荷重の方向によって応力の分布は大きく変化した。しかし、応力の外側から内側への変化としては荷重の方向によって著明な差はなかった。下顎骨臼歯相当部下顎下縁に荷重を加えた場合と異なり、外側の大きな応力はそのまま移行的に内側に伝播された形となっていた。 以上、下顎骨に荷重を加えた場合、荷重条件の方向、部位、および拘束条件により変化し、荷重部での応力集中以外に他部位での応力集中は外側と内側でも差があることから、下顎骨骨折の発生には外力の作用状況が大きく影響することが示唆され、介達骨折初期発生過程についての推測が可能となった。
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