研究概要 |
癌免疫におけるIL-10の役割を明らかにするため以下の実験を行った。癌細胞からリンパ系細胞に対しリンパ系細胞との直接接触の有無と無関係にIL-10を分泌させる因子が産生されているか否かを検討した。その結果、癌細胞とリンパ系細胞との直接接触の無い条件下で、以下の事実が明らかとなった。1)ヒト癌細胞株UTC-8から常時リンバパ系細胞にたいしIL-10を産生誘導する因子が放出されていること。2)この因子はAdhesion cellsだけからだけでなくNon-adhesion cellsからも産生されること。3)放射線照射された癌細胞は本因子の産生能が軽度減弱するが、誘導能は保持すること。4)本因子の分子量はおよそ3万以下で1万以上の範囲に強く認められること。 5)本因子に暴露したリンパ系細胞からは24時間以内にIL-10が分泌されること。6)しかも7日間の間活性が消失することなく増加しつつけること。さらに、このIL-10誘導因子の候補としてIL-4,IL-6,PGE-2を検討した結果、 7)1L-4,IL-6は検出されなかつたが、新たに8)生理的濃度のPGE-2がIL-10を誘導することを発見した。しかし、実際の癌患者では生理的濃度を超えた高濃度のPGE-2が産生されているにも関わらず、IL-10が検出されるので、PGE-2以外のIL-10誘導因子の存在が推察された。これらの結果から癌細胞はPGE-2や本分画に関わる他の未知の因子を分泌して癌細胞自身を細胞性免疫系の攻撃から守る機構を備えていることが証明された。今後は今回の研究で明らかに出来なかった1)IL-10産生細胞の同定、さらに2)本活性を持つ未知の因子の解明が待たれる。
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