研究概要 |
我々は口腔癌の浸潤・転移のメカニズムを明らかにするために、各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、既知あるいは未知の関連遺伝子の検索を行ってきた。 Autocrine Motility Factor(以下、AMFと略す)は自己分泌型遊走因子として知られ、発生の初期段階の未分化な繊維芽細胞やある種の腫瘍細胞で特異的に分泌されるサイトカインである。AMFと癌の浸潤能との間に深い関連を示唆する報告が相次いでおり、また臨床材料では腫瘍組織におけるAMF受容体AMF Receptor(以下、AMFRと略す)の発現量と予後との間に関連性を示唆するデータもいくつか報告されている。 我々は各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞株の間で、このAMFとAMFRの発現の検索を行ってきた。我々は高転移性株LMF-4がAMFを分泌していることをみいだし、LMF-4の分泌したAMFは、口腔癌以外の繊維肉腫細胞株(HT1080)にも作用することがわかった。しかも、LMF-4の運動能はAMFの濃度依存性に高まることがわかった。一方、各種ヒト口腔扁平上皮癌細胞株の間でAMFRのcDNAをプローブにノーザンブロット解析を行ったところ、非浸潤型で非転移性のHSC-2、HSC-4ではmRNAの発現レベルが、口腔癌細胞の持つ浸潤・転移の能力との間に相関があることが示唆された(以上、Y.NIINAKA et al.:INTERNATIONAL JOURNAL OF ONCOLOGY,9:433-438,1996)。 なお現在我々は転移抑制遺伝子として注目されてきたnm23/NDP kinaseの口腔癌における発現と機能についても解析中である(口腔病学会雑誌65巻2号in press)。
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