研究概要 |
1.平成8年度と同様に,58名の未治療の睡眠呼吸障害患者を対象にして睡眠ポリグラフと睡眠オキシメトリーを施行して,無呼吸低換気指数が5以上または90%時間比が1%以上を診断基準として成人の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者を選択し,全例に咽頭造影側方セファログラム分析を行い,睡眠呼吸障害と関連深い咽頭気道形態のパラメーターを計測した. 2.睡眠ポリグラフと咽頭気道形態のパラメーターから閉塞型の睡眠時無呼吸症候群を選択し,さらにレーザーによる軟口蓋形成術を希望した症例を除外して,H erbst型下顎前方移動装置を作製して同装置の治療効果を睡眠ポリグラフならびに睡眠オキシメトリーにて判定した. 3.また,経鼻式持続陽圧呼吸装置(鼻CPAP)を希望者に導入し,睡眠ポリグラフならびに睡眠オキシメトリーにて効果を判定したところ,およそ6cm H20の陽圧でH erbst型下顎前方移動装置と同等の効果が認められた. 4.H erbst型の下顎前方移動装置にて効果のなかった症例にも経鼻式持続陽圧装置(鼻CPAP)を使用したところ,陽圧を増加させることにより,無呼吸低換気指数が改善し,特に低酸素血症(正確には経皮的低酸素飽和度状態)の改善は著しい傾向があった.しかしながら,陽圧が10cm H20以上となると,呼吸苦が生じて睡眠が妨げられたり,耳痛などの合併症が出現した. 5.経鼻式持続陽圧装置の作用機序を咽頭造影側方セファログラムを用いて検討したところ,同装置による咽頭気道の拡大作用は軟口蓋を口腔側に移動させて軟口蓋と咽頭後壁の間の気道を拡大することから,主な作用点は中咽頭部にあったが,その効果は舌根部の気道経にも大きく依存していることがわかった. 5.今後は,下顎前方移動装置と経鼻式持続陽圧装置との併用療法について,さらに研究を推進させる予定である.
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