1. 顎関節内障の病期分類と関節鏡視下手術の長期評価(村上) 保存療法の奏効しなかった顎関節内障クローズドロック症例に対して施行した関節鏡視下手術、41例56関節について3年以上最長5年9か月(平均4年4か月)の長期臨床経過について調査した。合わせてWilkesの顎関節内障の病期分類(1989)に従って分け、それぞれの病期毎の症例とその長期成績も評価した。全41症例の性別は男性2例、女性39例で、その平均年齢は39歳であった。術前の平均開口度は30.3mmで、すべての症例は画像診断において復位しない関節円板の前方転位所見を示し、一部の症例では円板の穿孔と下顎頭の変形が見られた。すなはちWilkesの病期分類では病期III以上の症例であり、病期の高い例ほど高年齢であった。病期III、IV症例には関節鏡視下剥離授動術が行われ、病期Vには主に鏡視下関節形成術が施行されていた。臨床症状の評価は質問表による疼痛、顎機能障害ならびにADLの定量評価と開口度、リコール症例についてはさらに触診、聴診を行いエックス線学的評価を加えた。長期経過での成績は優22例、良15例、不可4例で、その奏効率は90.2%であった。病期分類別ではその奏効率はそれぞれ病期III(14例)で85.7%、病期IV(12例)で91.7%、病期Vで(15例)93.3%であった。 2. 顎関節内障に対する関節開放手術の長期評価(柴田) 1982年10月から1994年9月までの12年間に47例56関節に関節円板形成術を施行した。そのうち5年以上経過し、遠隔成績を追跡しえた31例38関節について調査した。臨床病態の分類では間歇的ロック4例、クローズドロック22例、オープンロック5例であった。術後のX線学的検査では大多数の症例が軽度ないし中等度の下顎頭の平坦化がみられたが、明らかな吸収をみた症例はなく、疼痛、顎機能障害ならびにADLの定量評価、ならびに開口度は術前に比べて明らかな改善がみられ、その全症例での奏効率は90.3%であった。
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