口膣扁平上皮癌におけるインテグリンの発現様相と癌悪性度との関係をみるために、α_vβ_4インテグリン欠損株と同インテグリンの強制発現株を用いて実験を行い、以下の結果を得た。 1、α_vβ_4インテグリン強制発現株の、プラスチックシャーレ上の増殖能は、親株と比し変化がみられなかった。 2、軟寒天中でのコロニー形成率は、親株のそれ(約25%)に比し、全てのα_v強制発現株で著明に低下(5%以下)した。一方β_4では、親株(約5%)に比べて、全ての強制発現株でコロニー形成率が増加(約8〜40%)した。 3、角化細胞の分化マーカーであるインボルクリンを指標として、インテグリン強制発現株の分化度を、親株と比較した。全てのα_v強制発現株で、インボルクリンの発現が亢進したが、β_4強制発現株ではインボルクリンの発現に変化はみられなかった。 4、α_v強制発現株の、ビトロネクチンへの接着能は亢進したが、β_4強制発現株のラミニン1、5への接着能は軽度低下した。 5、タイムラプスビデオで観察したプラスチックシャーレ上のrandom migrationは、α_vβ_4強制発現株とも、親株と比し変化はみられなかった。 コラーゲンゲルへの浸潤能は、β_4欠損株がα_v欠損株に比し高かったが、親株と強制発現株における浸潤能の差はなかった。 今後、ヌードマウスへの移植実験や、細胞外基質上での遊送能、細胞外基質分解酵素についての実験を追加し、インテグリンの発現様相と癌悪性度との関係を明らかにしたいと考えている。
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