研究概要 |
1)扁平上皮癌の増殖に及ぼす表皮細胞分化抑制因子(以下EDIN)の影響 培養扁平上皮癌細胞株HSC-2,3,4および当科で樹立したFUKUDA株についてEDIN存在下での増殖能を調べた。培地中にEDINを100〜500μg/ml添加し,経時的にトリプシンで分散した細胞数をCoulter Counterで計測した。いずれの細胞株においてもEDINは増殖に影響を与えなかった。 2)細胞運動能に及ぼす影響 培養扁平上皮癌細胞についてEDIN存在下で細胞運動能に及ぼす影響を調べた。H-357株の培養液にEDINを250μg/ml添加し,Interval VTR装置を用いて,細胞運動を経時的に観察した。EDIN添加,無添加とも同様の結果を示し,細胞運動の促進および阻害は認めなかった。 3)ADP-リボシル化タンパクの検索 培養扁平上皮癌細胞株HSC-2,4,FUKUDA株の培地中にEDINを50,100,250,500μg/mlになるように加え培養した後、細胞をスクレイパ-で回収し、超音波処理を行った。この標品にEDINと[^<32>P]NADを加えて37℃で反応後,SDS-PAGEでADP-リボシル化されたタンパクの検索を行った。いずれの標品もRhoP21と思われるバンドが検出された。このことからEDINは扁平上皮癌細胞では細胞外からADP-リボシル化をしないことが示唆された。 今後黄色ブドウ球菌の菌体外産物であるEDINが感染に果たす役割を検討するために,EDIN産生株であるS.auresu E-1株を用いて各種培養細胞に対する付着実験や,患者の口膣内から黄色ブドウ球菌を分離し,EDIN産生性を検討する。また各種抗癌剤存在下での培養扁平上皮癌の分化と増殖に及ぼすEDINの影響も検討したい。
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