研究概要 |
これまでの扁平上皮癌細胞株HSC-2,HSC-4を用いたADP-リボシル化タンパクの検索結果から,表皮細胞分化抑制因子(EDIN)は扁平上皮癌細胞では,培地中に添加しても細胞内に取り込まれず,細胞内の標的タンパクをADP-リボシル化しないことが推測された。しかし,Fukuda細胞では50〜250ng EDIN/mlの範囲では,EDINの量が増えるにつれて,ADP-リボシル化されたタンパクは増加したことから,細胞によってはEDINは細胞外から作用し,何らかの経路で標的タンパクの発現量を増加させる可能性も考えられた。 Tillyらの方法により,扁平上皮癌細胞株KBを用いて細胞膜透過モデルを作成し,培地中にEDINを添加することで細胞内に取り込まれ,細胞質中の標的タンパクに作用できるようにし,扁平上皮癌細胞にCDDPを作用させたときのEDINによる分化抑制効果を検討した。 方法は,35mmシャーレでconfluentまで培養したKB細胞を0.4U/mlになるようStreptolysinOで処理し,EDIN添加および非添加の群に対し,0〜20ng/ml CDDPになるよう調整し培養した。48時間後,細胞を回収,ホモジェネート後,遠心し上清中のinvolucrinをELISA法で定量した。 結果は,EDIN添加および非添加でinvolucrinの発現量に明らかな差はなかった。またCDDP濃度とinvolucrinの間に相関は認めなかった。
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